陽だまりの夢。


9 

闇の中、『私』は目覚めた。
『……ここはどこだ?』
答える声はない。
『私は……何者だ?』
答える声はない。
『何を為せばいい……?』
答える声はない。
『私は……何者だ? どこへ行って、何を為せばいいのだ……?』
答える声はない。
闇。その中にある『私』と言う意思。それが全て。
……そしてそれが……それこそが答え?
そうか。そうなのか。
これが答え、これこそが答えだ。何だ、簡単ではないか。
私は『闇』だ。闇、そのものだ。
答えがないのは当然だ。
今、この『世界』には『私』しかおらず、『私』こそが唯一にして絶対の存在なのだ。
(惜しいが、違う)
……遠くから意思が流れてきた。
『私』が『闇』を『私』と認識した事により、その認識力が上がったからなのだろうか。
『私』は、ようやく求めていた答えを聞かせてくれそうな存在を感知した。
(違うとはどういうことだ?)
私はその『他の存在』に向かい意思を放つ。
(今の汝は、まだ自分の『領域』を持たず、閉じた空間に閉じ込められているだけに過ぎぬ)
答えは重厚な力の意思と共にこちらの闇を振るわせる。
『私』は戦慄を覚える。
相手の存在は、どうやらこちらよりも上手のようだ。
(今は、待て)
(待つ?)
意思は、『私』の今後について御教授くださるようだ。
力の劣る『私』は、とりあえずは大人しくそれに従う他ない。
(やがて汝は、『力』と『領域』と『名』を得よう。その時をしばし待て)
そう告げると、その意思の元である存在が遠く離れたように感じた。
一方的にこちらとの問答を打ち切ったのだろう。
まあ、いい。
そうか。
ならば今はただ、その時を待とう。
嘘はあるまい。
自分より下である『私』を、先ほどの存在が貶める理由もあるまいし。
笑い出したくなる衝動と共に、『私』はその時を待った。
どれほどの時間がその間過ぎたかなどはわからない。
しかし、『来た』。
ついにその時が、来た。
『私』はついに力を得、『名』を得た。
そう、私の名は


10へ